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日本カジノ産業とゲーミング産業、発展の行方


II. 「日本におけるパチンコと米国におけるカジノの法規制に関する比較研究」

 1. 概要

  このレポートは、米国カジノ業界の歴史を紹介し、その法規制および取締りシステムをパチンコ業界のものと比較することによって、パチンコ産業に関する法規制や取締りシステムの見直しと改善案を提案する目的で書かれた。

  レポートの中で著者のシャノン=バイビー氏は、ネバダ州におけるカジノ発展の歴史を通して:

  1. いかにして組織的犯罪が除去されていったのか
  2. どのような課税が行われ、脱税を困難にしていったのか
  3. なぜ資金調達が可能になり産業が発展していったのか

 について説明している。続いて日本のパチンコ業界およびネバダやニュージャージー州のカジノに対する法律の目的や背景にある政策について解説。そして、パチンコを許可する日本およびカジノを合法とする米国の3州(ネバダ、ニュージャージー、ミシシッピ)の行政当局の構造、職員の権限と責任および取締りシステムについて明記している。また、日本の政府高官とパチンコ事業経営者のインタビューを基に、組織犯罪、脱税、景品交換などに対する法的規制構造と過程についての観察を行っている。最後に、それぞれの問題を解決するためにパチンコに対する法規制はどうあるべきかというバイビー氏自身の見解が述べられている。

 2. ゲーミング業界の功労者:シャノン=バイビー氏

  著者のバイビー氏は、弁護士としてのキャリアを基に1971年からネバダ州ゲーミング管理委員会(GCB)委員に就任した。全米弁護士協会ゲーミング法委員会理事長、国際ゲーミング弁護士協会(IAGA)の発起人・委員長などを歴任。民間では、ゴールデンナゲットアトランティックシティ社の社長、クラリッジホテル&カジノ(ニュージャージー州)の最高経営責任者、ユナイテッドゲーミング社の社長などとして活躍。また、1994年から2003年に他界するまで、州立ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部准教授として、および法学部客員教授として教鞭をとり、カジノ経営論やゲーミング法を担当した。同時に同大学の国際ゲーミング研究所所長も務めた。バイビー氏はさらにゲーミング法や運営だけでなく、ギャンブル依存症問題に対しても積極的に取組んだ。1991年から全米プロブレムギャンブリング協会(ギャンブル依存症問題に取り組む団体)の初代代表、1995年からはネバダ州プロブレムギャンブリング協会の初代代表も務めた。

  3. レポートの論点

  バイビー氏のこのレポートの論点は次の2点である:

?@ 米国のカジノ法規制、および取締まりシステムは、様々な社会コストを最低限に抑えると共に、利益を最大限に受け取ることが目的で作られている。

  カジノは、1)税収入の確保と、2)産業の発展による経済的効果を期待して合法化されるというのが国際的な傾向だ。日本でカジノが合法化に至るとするなら、同じ理由からであろう。だが合法化にあたっては、組織犯罪との繋がり、脱税、不正、ギャンブル依存症といった社会に対する悪影響(社会コスト)が懸念される。ギャンブルに対する米国の法規制はこれらの社会コストを最低限にし、税収や経済的効果といった利益を最大限にするために作られている。特にネバダ州は、ゲーミング統制法の中でカジノを含むゲーミング産業が「州の経済と住民の福祉に極めて重要である」と明確にした上で、州の責任はゲーミング産業に対して免許を発行したり監督したりするだけでなく、ゲーミング産業が安定して成功し、競争的な市場となるよう“支援”することにも及ぶと規定している。

?A 日本の法律は経済的目的でパチンコを許可しておらず、その法規制および取締まりシステムは社会の風俗を乱さないことが目的で作られている。だが、既に巨大産業に発展しているパチンコの成功と経済的効果を引き続き維持していくためには、パチンコの法的立場を変えないにしても、現行の法規制や取締りシステムの見直しは必要

  国際的な基準ではギャンブルであるパチンコだが、日本の法律はあくまでも「成人のための娯楽」と、その法的立場を明確にしている。パチンコを成人向けの娯楽からギャンブルに概念を変更する必要はないが、他の成人向け娯楽とは違った扱いをするべきである。パチンコ業界の規模からみて、ギャンブルの規制モデルに似た規制システムが必要であり、パチンコを他の全ての成人向け娯楽と同じように扱う必要は無い。まずは、パチンコの成功と経済的効果を引き続き維持するために、現行の取締りシステムを見直す必用がある。

 現在、パチンコ産業に関する政策の立案や規制の採択に関しては国家公安委員会が責任を持ち、実際の取締りの執行は警察や都道府県公安委員会が行っている。これでは準立法機能と準行政機能が分離しているため、規制に現実的な効力を与える責任が全く無いようだとバイビー氏は指摘する。このようなシステムのままだと、規制の効果を確かめながら、新しい規制や改善された規制の必要性を確認することができない。また、警察庁と地方警察は与えられた法律を執行し、暴力団などの犯罪的問題を処理するには十分な機能を持っているが、パチンコ産業の財務的な健全発展に関心を払う正式な責任は持っていない。そこで、政策立案の責任とその規則の業界への執行責任の両方を有し、パチンコ産業にのみ責任を有する新たな機関(または国家公安委員会)を作るべきであると提案している。

 

  これらの論点を理解することは、パチンコ業界および未来のカジノ業界を形成する政府、行政、および運営事業者などにとって非常に参考になるはずだ。

 法規制者、経営者、そして教育者という実にバランスの取れた総合的な見解を持っていたバイビー氏。このような経験を持ち、パチンコやカジノを含むゲーミング業界の発展と公共の福祉のために身を捧げた人物は彼意外に未だ存在しない。 このレポートが日本の将来のカジノ業界や、ゲーミング業界全体の発展に活用されることを願ってやまない。

文責;EB総研 客員研究員 高橋 紀代美

 

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本記事内でご紹介したのは;

「米国カジノ政策と運営・規則の実態」

定価:50,000円
頁数:B5判128頁
発行:2002年3月


「日本におけるパチンコと米国におけるカジノの法制度に関する比較研究」

定価:12,000円
頁数:B5判162頁
発行:1998年6月

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