世界のカジノ市場:オーストラリア&ニュージーランド

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世界のカジノ市場:オーストラリア&ニュージーランド

カジノを合法としているオーストラリアとニュージーランド。その市場は一体どんな様子なのだろう?

まずはオーストラリア市場を覗いてみよう。オーストラリアにはゲーミングマシンやテーブルゲームなどが楽しめる”カジノ”以外に、ゲーミングマシンのみ設置が許可されている”ホテル”と呼ばれるパブやバー、さらに”クラブ”と呼ばれるボーリングクラブやゴルフクラブなどの社交クラブが存在する。国内全体でカジノは13軒(2004)しかないが、ホテルは3434軒、そしてクラブは2515軒(IGWB2004年8月号)も存在する。ただし、ホテルやクラブに設置できるゲーミングマシンの数には各州によって制限があり、例えばニューサウスウェールズ州ではホテルが30台まで、クラブが450台までである。現在、国内のホテルとクラブに設置されているゲーミングマシンの数は併せておよそ19万台。一方、カジノにあるゲーミングマシンの総数は11652台で、テーブルの総数は1326台である。中でも一番規模の大きなカジノはビクトリア州にあるクラウンカジノで、ゲーミングマシンが2500台、テーブルが350台設置されている。2002/03年度のカジノ13軒におけるゲーミング部門の総売上はおよそ25億3100万豪ドル。カジノを訪れる客の85%が州内の住民、10%が州外の住民、5%が外国人であるという(オーストラリアカジノ協会)。ホテルおよびクラブの総売上は89億1千万豪ドル(IGWB2004年8月号)。カジノ同様、ホテルやクラブの遊技客もほとんどが地域住民である。

なお、ウェスタンオーストラリア州はホテルやクラブがゲーミングマシンを設置することを禁止している。反対に、首都特別地域は唯一のカジノであるカジノキャンベラにゲーミングマシンを設置することを禁止している。

さて、国内最大の市場はシドニーのあるニューサウスウェールズ州だ。この州にはカジノが1軒、ホテルが1809軒、そしてクラブが1374軒あり、合わせて10万台以上のゲーミングマシンが設置されている(オーストラリアカジノ協会調べ)。この数字は実に国内に設置されているゲーミングマシンの総数のおよそ50%に値する。特に、シドニーには5万台以上設置されているそうだ。州全体では州民50人に対して1台のゲーミングマシンが設置されている計算になる(IGWB2004年10月号)。

オーストラリア国民はギャンブル好きが多いようだ。国民の4割が毎週何らかの賭け事(ゲーミングマシン、競馬、宝くじなど)をしており、1人年間およそ1000豪ドルを損失しているようである。そして、このうちの大半がパブやクラブでのゲーミングマシンに投じられているという(IGWB10月号)。

ニュージーランド市場はどうだろう?国内初のカジノが1994年にオープンして以来10年。現在国内には合計6軒のカジノが存在する。設置されているゲーミングマシンの台数は2004年5月で併せて2824台、テーブルは197台で、遊技客が使った(負けた)金額は4億8400万NZドルである。6軒のカジノのうち半分はスカイシティエンターテイメントグループが所有している。オーストラリア同様、ゲーミングマシンの設置が許可されているホテルやクラブが2004年9月時点で併せて1897軒ある。合計22294台のゲーミングマシンが設置されおり、遊技客が使った(負けた)金額は10億3500万NZドルである(内務省)。

オーストラリア・ニュージーランド市場の最新動向

1999年12月、オーストラリアのハワード首相が国を挙げてギャンブル依存症問題に取り組むと発表した。以後、各州も規制の強化に乗り出した。例えば、ニューサウスウェールズ州はホテルやクラブに対し、ゲーミングマシンの総数を州全体で10万4千台まで(ホテル25980台、クラブ78020台)と決めた。また、ゲーミングエリアに時計を設置することを義務付けたり、スロットクラブポイントの現金還元を禁止したりした。さらに、ゲーミングマシンの宣伝広告を店外で行うことを全面的に禁止した。そして、店外および店内でも店外から見える部分にゲーミングに関する看板を設置することも禁止した。

さて、オーストラリアとニュージーランドではオフィスやレストランなど個人宅以外の全ての室内を禁煙とする動きが進んでいる。オーストラリアでは既にレストランやショッピングセンターなどでの喫煙を禁止している州がほとんどだが、タズマニア州は2005年の元旦からパブやクラブ内のゲーミングマシンが設置されているエリアおよびカジノ内の全てのゲーミングエリアも禁煙とした。ビクトリア州は2007年7月までに州内の全てのパブ、クラブ、およびバーを禁煙とする。ただし、クラウンカジノのハイローラー専用カジノルームだけは例外となる予定だ。ニューサウスウェールズ州も2007年7月までにはスターシティカジノのプライベートゲーミングルーム以外は全て禁煙にする。また、クィーンズランド州が2006年7月から、首都特別地域が2006年12月1日から、ウェスタンオーストラリア州が2007年元旦から、サウスオーストラリア州が2007年10月31日から室内を完全に禁煙とする予定である。(ただし、クィーンズランド州はカジノのハイローラーエリアだけは例外とする予定。)ノーザンテリトリーは現在レストランやカフェ、ショッピングセンター内での喫煙を禁止し、ホテルやバーでの禁煙エリアの設置を義務付けているが、そこからさらに喫煙に関する法律を強めることは今のところ予定していないようだ。ニュージーランドは2004年12月10日から仕事場(室内)での喫煙を完全に禁止した。カジノやパブ、クラブなども例外でなく、店内は全面的に禁煙となった。ただし、カジノのバルコニーといった屋外にある施設では喫煙することができる。カジノやパブなどにとって、このような禁煙法は職場環境の健全化や清掃および換気コストの削減に繋がるという良い面もあるが、売上の減少にも繋がる可能性があると推測されている。

ところで、近年はカジノや関連企業の買収劇が盛んである。例えば、国内最大手ゲーミング企業であるTabcorpは2003年にクィーンズランド州のジュピターズカジノを買収した。ニュージーランドのカジノ企業であるスカイシティグループは2004年の7月に米国の最大手カジノ企業であるMGMミラージュ社からMGMグランド・ダーウィンを購入した。この売買の成立により、MGMミラージュ社はオーストラリア市場から撤退することとなった。さらに、クラウンカジノを運営するPBL社(Publishing and Broadcasting Limited)は2004年の9月にバーズウッドカジノの買収に成功している。また、2004年10月にはオーストラリア国内で2番目に大きい流通企業であるウールウォース(Woolworths)による国内最大パブチェーンのオーストラリアンレジャー&ホスピタリティグループ(Australian Leisure and Hospitality Group)の買収話が合意に達した。これにより、ウールウォースはこのグループが取得していたゲーミングマシンの運営ライセンスも手に入れ、今後はパブに設置されているおよそ6千台ものゲーミングマシンを運営することになった。

最後に、ニュージーランドの内務省は国内のパブやクラブに設置されているすべてのゲーミングマシンを今後2年半以内に完全に電子監視システム下に置くと発表した(2004年10月25日)。これはゲーミングマシン運営の管理や監査および金の流れの追跡を簡素にし、窃盗などの犯罪を最小限に防ぐためであるという。

中央および州政府のギャンブル依存症に対する姿勢が変わらない限り、オーストラリアのカジノ市場、ホテル市場、およびクラブ市場の更なる拡大発展は期待できないだろう。しかし、オーストラリアのカジノやホテル・クラブ市場は既に確立されており、また遊技客のほとんどがギャンブル好きの地元民であるため、安定した市場が今後も続くと予測されている。

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